世界初、ヒトの脂肪組織を用いて水素投与療法のメリットが証明される
2024年12月27日
※この記事は各研究機関が公式に発表している論文等のデータを基に配信しております。詳しくは「引用文献」をご参照ください。
2024年9月13日、かの有名な科学雑誌Natureが発行する『Scientific Reports』に、名古屋市立大学大学院医学研究科の山田敏之講師、須田久雄教授らの研究グループ、愛知学院大学の中村信久准教授、成瀬桂子主任教授及び愛知みずほ大学の松原達昭教授との共同研究における報告「水素ガスは脂肪組織の病態を改善する〜ヒトの脂肪組織を用いて水素投与療法のメリットを証明〜」が掲載されました。[1]
そこで、今回は本論文の結果が水素吸入、水素水などの「水素ガス」の医療に関する動きにどのような影響があるかについて考察していきたいと思います。
研究におけるポイント
研究におけるポイントは、
- 世界で初めてヒトの皮下脂肪組織を高濃度水素に直接投与した
- 溶存水素が脂肪組織の酸化ストレスマーカーの軽減作用を直接起こすことを証明
- 溶存水素の投与によって脂肪組織及び脂肪サイズの縮小効果を認めた
- 溶存水素が悪玉サイトカインであるケメリンの発現を有意に抑制
- 本研究は水素ガスの救急医療や集中治療、生活習慣病対策への貢献を期待できる
ことと報告されております。
本研究は、心臓血管外科手術を受けた患者の同意のもと、皮下脂肪組織を採取、水素ガスを溶かした培養液にこの脂肪組織を浸し、水素の影響を評価しています。
図2.(a) 水素添加48時間後の脂肪組織外観の変化。(b) 水素添加48時間後の脂肪組織重量の変化を示す折れ線グラフ。結果は平均値±標準誤差(SE)で示した。*p<0.05対コントロール。(c)培養液の外観。
図3.(a)脂肪組織のヘマトキシリン・エオジン染色。スケールバー、200m。 (b)水素添加後の脂肪組織サイズの減少。(c)水素添加後の脂肪細胞サイズの減少。グラフ中のデータは、Image Jを用いて定量化した。**p<0.01対コントロール。
図2.(a)が特に見た目にもわかりやすいですが、明らかに水素(Hydrogen)を投入した脂肪組織は減退していることが確認できます。
そのほかの効果についてもポイントに語られているような様子がうかがえます。
これが、ヒトの組織であるということがとても重要です。
かつて「先進医療B」に指定されていた「水素ガス吸入療法」
先進医療Bの取り下げは「効果がない」との判断ではない
別の記事で厚生労働省の公式の発表を用いて詳しくご紹介していますが、かつて先進医療Bに指定されていた水素ガス吸入療法は、コロナの影響を受け目標臨床数を超えることができなかたったため治験中止の基準となり取り下げざるを得ない状況になりました。再度承認プロセスをクリアするために挑戦がいまなお続けられております。
ただ、医療というとても高度で繊細な技術の承認となりコストもリソースも時間も途方もないくらい必要となるため、医療界においてもその期待度はとても高いことを伺えますが、その性質上なかなか動きは機敏にはなりません。
詳しくは下記記事をご参照ください。
水素の医学的応用については日本が世界に先駆けてリードしている分野
先進医療Bへの承認は日本が世界に先駆けて「水素」の医療への応用を公的な承認プロセスに進めた世界に先駆ける行動になりました。
今や、世界における分子状「水素吸入器」の市場規模が今後8年で倍増するようなレポートも報告されており、その潮流は著しく発展しているといえます。
ヒトの臓器への直接効果を評価した事が画期的
これまで水素分子のヒトの臓器への直接効果を評価したデータはなかった
水素の健康に関する論文は2,000報以上報告されていますが、ヒトへの治験はまだ多くはありません。
そのため、心無い雑誌等のインタビューに答える医療関係者を名乗る人は「動物等への治験」が多い状況として、水素の効果を語ることは「インチキ」と言っていいでしょう、というような極端な発言をしたりすることで、あたかも「水素は効果がない」という意見論評が切り取られ、そういう意見が広がるきっかけを作るようになりました。
今回の研究報告により、ひとえに「水素はインチキである」という論評を十分否定する結果を得ることになりました。
水素医学研究における数少ない重要なトランスレーショナル(橋渡し)研究
水素ガスの臨床医学的効果を支持する重要な結果が得られたものとなり、これまで報告された哺乳類に対する水素の効果についての論評が「疑わしい」という意見を軽減する画期的な一歩となりました。
世界の市場規模を報告するレポートに掛かれているように「メーカーは、製品の有効性を検証し、市場の信頼性を高めるために、医療機関や研究機関とのコラボレーションを強化」しており、官民が共同して研究、開発している動向が進んでおり、水素吸入器の安全性や有用性がさらに向上していく動きになっているようです。
最後に、いつもご紹介している論文の締めくくりの言葉をご紹介したいと思います。
水素は理想的な医薬品になるはずである
水素ガス吸入療法の可能性 Medical Gases, 22 (1): 14-18
東京歯科大学市川総合病院救急科の医師であり、慶應義塾大学水素ガス治療開発センターの教授である鈴木 昌 氏の『水素ガス吸入療法の可能性 Medical Gases, 22 (1): 14-18』[2]には、このような記述があります。
「分子状水素は無色透明無味無臭で刺激性がないので、投与する場合、患者に何ら負担を強いるものではない。また、無害であると考えられ、よく拡散するので、細胞膜を容易に超えて病態の核心的な中枢部分にまで到達することが予想される。
したがって、理想的な医薬品になるはずである。分子状水素が臨床応用されるためには、まだまだ大きな障壁があり、Darwinian sea に溺れることもありうる。
しかし、水素医学に触れたほとんどの研究者はその驚くべき効果の虜となり、夢のような大きな将来像を抱く。立場を超えて多くの医療関係者、薬学関係者が力を合わせてこの夢のような医薬品の上市がかなうようになることを期待している。」
引用文献・関連記事
[1] 水素ガスは脂肪組織の病態を改善する〜ヒトの脂肪組織を用いて水素投与療法のメリットを証明〜『Scientific reports』 2024 年9月13日掲載(名古屋市立大学 大学院医学研究科) [2] 水素ガス吸入療法の可能性 Medical Gases, 22 (1): 14-18この記事に関連する#ハッシュタグ「#ハッシュタグ」ボタンをクリックすると関連記事を検索していただけます。
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